『いつか読書する日』

かつて一度みて、また折に触れ思い返す映画がある。田中裕子主演の20年近く前のこの映画もそのひとつで、なかなか読む時間が取れないのについ買ってしまい、少しずつ本棚に溜まっていく背表紙の羅列を見る度にため息とともに脳裏に浮かぶ。確か主人公は毎日、新聞か何か配達の仕事をしていて、家に本がずらっとあるんだけどなかなか読めないでいるっていう話しだったよな。でも見てからだいぶ経つので細かい話しまでは忘れてしまった。もう一度見たいなぁと思っていたらなんと駅前のTSUTAYAでレンタルしているのを発見したのです。で、最近十数年ぶりに見かえしました。

新聞配達だったっけと思っていたのは牛乳配達でした。早朝まだ暗い中、長崎のあの坂ばかりの街を牛乳瓶を何本も入れた配達用バックを斜め掛けにして息を切らしながら縦横無尽に走り回り、その後スーパーでレジ打ちをする。版で押したかのような代り映えのしない日々。そんな主人公の住む家には、天井まで届く大きな本棚にぎっしりと詰まったたくさんの本がある。それは本棚だけに収まらず柱の梁にまで積まれている。主人公は50才、生きているうちに読み切れるのだろうか、と初めてこの映画を見た時にもそう思ったことを思い出した。あの時はかろうじて若かった自分も今は彼女と同じ年になり、あの坂を走って登れるだろうかとか、ラジオ番組にリクエストするとしたら何の曲を選ぶだろうかとか、逐一自分に置き換えてしまうが存外悪くない。

物語は後半思いもしない展開となるが、それでも人生は続いていく。生きるってそういうことなんだろう。

さて私の本棚は主人公のものほど大きくないし、蔵書もそれほどない。なので近いうちに全部読めると思っている、これ以上買わなければ。

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明日(10/11)もお休みです。